前歯の部分矯正 · 日本から通う場合
前歯の部分矯正、
どんな場合にできますか?
前歯の部分矯正 · 治療期間 4か月


中央の前歯2本が目立って見えていた症例です。並びを整え、隣の歯との幅・長さのバランスを合わせました。結果には個人差があります。
このページの内容
奥歯の噛み合わせが安定していて、でこぼこが軽度〜中等度なら、前歯だけの部分矯正を考えられます。一般的な期間は3〜9か月で、全体の矯正より短くすみます。日本からは近いので、定期的に韓国に来られる方なら十分に通えます。
年齢とともに下の前歯が気になる理由
気のせいではなく、実際に変化が起きています。
正常な噛み合わせの人を40年あまり追跡した研究では、年齢とともに唇が後退して薄くなり、上唇から見える上の歯の量が40年で3.6mm減っていました[1]。別の長期研究でも唇の後退が確かめられ[2]、年齢とともに人中が長くなり上唇の赤い部分が薄くなることも報告されています[3]。
つまり上の歯はだんだん見えにくくなり、下の歯は相対的に目立つようになります。さらに歯には少しずつ前へ移動する生理的な傾向があり、長い時間のうちに前歯のスペースが足りなくなって重なりが生じます。矯正後に保定装置を使わなかった経験があると、変化はより早くなります。
部分矯正ができる条件
- 奥歯の噛み合わせが安定している — 奥の噛み合わせを直す必要がないこと
- でこぼこが軽度〜中等度 — 必要なスペースを歯の間を削る範囲でつくれること
- 口元の突出が強くない — 唇の位置まで変える必要があると範囲が変わります
- 並べた後に上下がぶつからない
上だけか、上下一緒か
基準はひとつです。上の歯を動かすときに、下の歯が邪魔になるかどうか。
たとえば前歯のすき間を閉じる場合、上下のあいだに十分な余裕があり、下の歯に当たらなければ上だけで解決します。閉じたときに下の歯とぶつかったり噛み合わせが不自然になったりするなら、上下一緒に進めます。この判断は模型と噛み合わせの分析で確認するもので、写真だけでは分かりにくい部分です。
スペースのつくり方 — 歯の間を削る量(IPR)
部分矯正では抜歯をしないため、重なった歯を並べるスペースを別の方法でつくります。いちばん多いのが歯の側面をごく薄く整えるIPR(ディスキング)で、1面あたり0.2〜0.3mm程度を複数の歯に分けて行います。
残るエナメル質に比べて、どのくらいの量ですか?
11件の研究・2,118本の歯を分析したメタ分析では、歯の側面のエナメル質は遠心面が近心面より平均0.10mm厚いと報告されています[4]。CBCTによる研究では、近心面0.96〜1.29mm、遠心面0.98〜1.25mmでした[5]。つまり側面のエナメル質はおおむね1mm前後で、1面0.2〜0.3mmを整えても大部分はそのまま残ります。
同じ研究では、1か所あたり0.20mmを超えると、特にエナメル質が0.7mm未満の薄い歯でリスクが中等度以上に分類される割合が有意に増えました[5]。だから一律の量ではなく、歯ごとの厚みを考えて配分することが大切です。
むし歯や歯ぐきの問題は起きませんか?
適切な方法と症例選択のもとでは、むし歯・歯周病の悪化・知覚過敏の一貫した増加は報告されていません[6][7]。4〜6年後に削った面と削っていない面を比べた研究でも、むし歯のリスクは増えていませんでした[8]。ただし含まれた研究の質は低〜非常に低いと評価されており、追加の研究が必要とされています。施術後の研磨とフッ素塗布を行った場合に結果が良かったことも共通して指摘されています[6]。
装置の種類
日本から通う場合は、装置の選び方が来院の回数にも関わります。
- マウスピース型(インビザラインなど) — ほとんど目立たず、取り外せるので食事と歯みがきが楽です。1日20〜22時間以上の装着が必要で、一度に複数枚をお渡しできるため、来院の間隔をあけやすい方法です
- MTA装置 — 部分矯正専用の小さな白い装置で、よく見なければ目立ちにくく、固定式なので装着時間を気にする必要がありません
- セラミックブラケット — 歯の色の装置で、部分矯正にも全体の矯正にも使えます
私自身も上下の前歯をMTA装置で部分矯正しました。IPRも一緒に行い、ワイヤー交換の後1〜2日は前歯で噛むと痛みがありましたが、薬なしで我慢できる程度でした。
期間と来院の目安
- 片顎のみ・動かす量が少ない場合 — 3〜6か月
- 一般的な前歯の部分矯正 — 3〜9か月
- 上下一緒・動かす量が多い場合 — 6〜12か月
全体の矯正が通常1年半〜2年かかるのに比べて短い期間です。来院は通常6〜10週間ごとで、来院の間はリモートモニタリングで経過を確認できます。
年齢や、以前の矯正のやり直しは?
年齢そのものは制限になりません。40〜60代で部分矯正を受ける方も多くいます。ただし歯周の状態(骨が下がっていれば計画をより慎重に)、ブラックトライアングル(並べた後に歯の間の三角のすき間が見えること)の可能性、既存のかぶせ物やベニアは事前に確認が必要です。
以前に矯正をして保定装置を使わずに前歯が戻った場合も、奥歯の噛み合わせはすでに整っていることが多く、部分矯正でやり直せることがよくあります。大切なのはなぜ戻ったのかで、多くは保定装置の問題なので、治療後の保定計画を最初から一緒に立てます。
参考文献
- Cephalometric changes during aging in subjects with normal occlusion. J Appl Oral Sci.(上唇から見える上の歯の量が40年で3.6mm減少)
- The aging craniofacial complex: a longitudinal cephalometric study from late adolescence to late adulthood. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2008;134(4):496-505.
- Soft tissue cephalometric analysis of the lips in orthodontic diagnosis and treatment planning: a narrative review.
- Kailasam V, Rangarajan H, Easwaran HN, Muthu MS. Proximal enamel thickness of the permanent teeth: a systematic review and meta-analysis. Am J Orthod Dentofacial Orthop.
- Assessing enamel thickness to estimate interproximal reduction: a CBCT-based study.
- Dental and periodontal alterations associated with the use of the interproximal reduction technique: a systematic review. Oral. 2026;6(2):27.
- Effects of interproximal enamel reduction techniques used for orthodontics: a systematic review.
- Zachrisson BU, et al. Dental health assessed after interproximal enamel reduction: caries risk in posterior teeth. Am J Orthod Dentofacial Orthop.
このページは一般的な情報であり、個別の診断に代わるものではありません。治療の適否・期間・回数は、検査のうえで一人ひとりの状態に合わせてご案内します。