矯正後のケア · 再矯正
再矯正しても大丈夫?
歯ぐきへの影響は?
実際の症例 · 過蓋咬合ですき間ができた前歯 · MTA装置(ミニチューブ)で再矯正 · 治療期間 4か月



下の歯が上の前歯の裏側に強く当たる過蓋咬合(上の歯が下の歯を深く覆う噛み合わせ)のために、上の前歯が少しずつ押されてすき間ができた、再矯正の症例です。上の歯のすき間だけを閉じるとまた開きやすいため、上下の前歯の両方に小さなMTA装置(韓国でよく使われる、部分矯正用の小さなチューブ型の固定式装置)をつけ、前歯のすき間を閉じながら、下の歯が上の歯に強く当たらないよう噛み合わせも一緒に整えました。治療期間4か月で終えました。結果には個人差があります。
このページの内容
結論からお伝えすると、歯ぐきに炎症がなく、歯を支える骨(歯槽骨)が安定していれば、再矯正は初めての矯正と同じ原理で十分に可能です。再矯正はほとんどの場合、前歯を数本少し動かすだけですむため、期間は3〜6か月と短く、歯ぐきへの負担が少ない小さな装置を選べます。まず確認することは2つ — なぜ後戻りしたのか、そして今の歯ぐきの状態です。
再矯正はどんな場合に行いますか?
診療室で出会う再矯正は、大きく分けて3つの場合があります。
- 保定装置(リテーナー)が外れた、または使わなかったために後戻りした場合 — 固定式の保定装置は、思ったよりよく外れます。脱離率は30〜40%と報告されており、ほとんどが最初の3〜6か月以内に起こります。[4] 歯のまわりの弾性線維は、矯正のあともしばらく以前の位置を覚えているため、特にねじれていた歯は元に戻ろうとする傾向が強くなります。このページのマウスピース矯正の症例が、保定装置が外れたあとに後戻りした場合です。
- 前歯にすき間ができた場合 — 下の歯が上の歯の裏側に強く当たる噛み合わせ(過蓋咬合)だと、上の歯が少しずつ前に押されて前歯にすき間ができ、歯ぐきが腫れることもあります。このとき上の歯のすき間だけを閉じるとまた開きやすいため、下の歯も一緒に矯正する計画を立てます。このページのいちばん上のMTA装置の症例がこの場合です。
- 年齢とともに下の歯が重なってくる場合 — 矯正をしたかどうかにかかわらず、年齢とともに前歯が少しずつ重なることがあります。詳しくは前歯の部分矯正、どんな場合にできますか?のページをご覧ください。
再矯正で、歯ぐきに問題は起きませんか?
いちばん多くいただく質問です。結論からお伝えすると、基準は矯正の回数や年齢ではなく、今の歯ぐきの状態です。歯ぐきが健康な成人、または歯周治療で安定した成人では、矯正後の歯ぐきの付着の喪失(アタッチメントロス)に、青少年と有意な差はみられませんでした。[1]
始める前に確認すること
- 歯ぐきの炎症 — 炎症がある状態で歯を動かすと、歯ぐきを傷めることがあります。炎症があれば、スケーリングと歯周治療を先に行います
- 歯を支える骨の高さ — レントゲン写真で、歯を支えている骨の高さを確認します
- 歯の根の長さ — 以前の矯正のあとに根が短くなっている場合は、動かす量と期間をより控えめに計画します
- 今ある保定装置と補綴物(かぶせ物など) — 残っている保定装置、クラウンやラミネートベニアがあるかを確認します
歯ぐきが下がることはありませんか?
歯ぐきが下がること(歯肉退縮)は、歯を外側(唇側)へどれだけ押し出すかと関係があります。[2] 再矯正はほとんどの場合、ずれた歯を元の歯列の中へ戻し入れる小さな移動なので、歯を外側へ大きく押し出す場合に比べて負担は少ないほうです。ただし、もともと歯ぐきが薄い方は、動かす方向をより慎重に計画します。
期間が短いほど有利です
矯正の期間が長くなるほど、歯根吸収、歯槽骨の喪失、エナメル質の脱灰のリスクが高くなると報告されています。[3] 前歯中心の再矯正は数か月で終わるため、その分、リスクにさらされる時間も短くなります。
前歯にすき間ができた場合には、上の歯に当たっていた噛み合わせを整えたあとに、腫れていた歯ぐきが落ち着くことも診療でよく経験します。歯ぐきが腫れる原因が歯の位置にあったのであれば、再矯正がむしろ歯ぐきの助けになることもあります。
歯ぐきへの負担が少ない装置は何ですか?
再矯正は動かす量が少ないため、装置を選ぶ余地が大きくなります。原則は3つです — 必要な歯だけに、小さく、みがきやすく。この原則に合う2つを、主におすすめしています。
① MTA装置(ミニチューブ)
小さなチューブ型の装置を、動かす必要のある前歯だけにつける方法です。このページのいちばん上の症例が、MTA装置で再矯正した場合です。
- サイズが小さく、唇に当たるかさばりや違和感が少なくてすみます
- 装置が小さいので歯ブラシとデンタルフロスが届きやすく、食べかすやプラークがたまりにくくなります
- 目立ちにくいので、仕事や人と会う場面での負担が少なくてすみます
- 固定式なので装着時間を気にする必要がありません
主に部分矯正と再矯正に使います。動かす量の多い全体矯正には、一般的なブラケットのほうが合う場合があります。
② マウスピース矯正
- マウスピースを外して、ふだんどおりに歯みがきとデンタルフロスができます
- 複数の研究をまとめたレビューでは、固定式の装置に比べて歯ぐきの状態、初期の痛み、治療中の生活の質で一貫した利点が報告されています[5]
- ほとんど目立ちません
- 再矯正は、初めての矯正より必要なマウスピースの枚数が少ないことが多くあります
そのかわり、1日20〜22時間は装着している必要があります。装着時間を守れないと、計画どおりに動きません。
実際の症例 · 保定装置が外れたあとに後戻りした前歯 · マウスピース矯正で再矯正 · 治療期間 4か月


矯正のあとにつけていた固定式の保定装置が外れたあと、前歯の間にすき間ができ、隣の歯がずれてきた症例です。これをマウスピース矯正でもう一度整えました。マウスピースを外してふだんどおりに歯みがきができるため歯ぐきのケアがしやすく、治療期間4か月で終えました。結果には個人差があります。
| MTA装置 | マウスピース矯正 | |
|---|---|---|
| 見た目 | 小さく、目立ちにくい | ほとんど目立たない |
| 歯ぐきのケア | 装置が小さく、歯みがきがしやすい | 外して、ふだんどおりに歯みがき・フロス |
| 装着の管理 | 固定式なので気にする必要なし | 1日20〜22時間、ご自身で装着 |
| 向いている方 | 装着時間を守るのが難しい方、前歯を数本動かすだけでよい場合 | 食事・歯みがきを自由にしたい方、プレゼンや会食の多い社会人の方 |
歯を少し削ると聞きましたが、大丈夫ですか?
再矯正でスペースが少し必要なときは、歯の側面をごく薄く整える歯の間を削る処置(IPR)をよく併用します。わずかな歯の重なりや、わずかに前に出た感じは、このスペースで解決できます。
- 1面あたり0.2〜0.3mm程度を、複数の歯に分けて整えます
- 歯の側面のエナメル質はおおよそ1mm前後あるため[6]、整えたあとも大部分が残ります
- IPRの4〜6年後に、整えた面と整えていない面を比べた研究では、むし歯のリスクは増えていませんでした[7]
IPRの痛みと安全性、スペースの計算については、歯の間を削る処置(IPR)のページで詳しくご覧いただけます。
IPRは、前歯の間の黒い三角のすき間(ブラックトライアングル)を小さくするためにも使われます。ブラックトライアングルは、固定式の矯正のあと38〜58%で報告されるほどよくみられますが[8]、歯と歯が接する位置を調整することで小さくできます。詳しい内容はブラックトライアングルのページにまとめています。
再矯正の期間はどのくらいですか?
前歯中心の再矯正は、通常3〜6か月です。このページのMTA装置の症例とマウスピース矯正の症例は、どちらも4か月で終えました。上下を一緒に行う場合や動かす量が多い場合はさらにかかり、奥歯の噛み合わせまで合わせ直す必要があれば、全体矯正が必要になることがあります。
また後戻りしないためには?
- 原因を一緒に解決します — 過蓋咬合のように下の歯が上の歯に当たる噛み合わせをそのままにして、前歯のすき間だけを閉じると、また開きやすくなります
- 保定装置を二重に — 固定式の保定装置は最初の3〜6か月に外れることが多いため[4]、はじめのうちは取り外し式を併用するのがよいでしょう
- サインを見逃さないでください — 食べ物がよく挟まる、歯ぐきが腫れた感じがする、歯の間にすき間を感じる、といったときは、保定装置が外れている可能性があります。早めに確認を受けていただくのがよいでしょう
- 定期検診のときに保定装置も確認します
保定装置をどのくらいの期間使うかも、治療が終わる前に担当医と確認しておきたい点です。
まとめ — 再矯正の前に確認すること
- なぜ後戻りしたのか — 保定装置の問題か、噛み合わせの問題か、年齢による変化か
- 今、歯ぐきに炎症はないか、歯を支える骨と歯の根は十分にあるか
- 必要な歯だけに、小さく、みがきやすい装置か — MTA装置またはマウスピース矯正
- IPRが必要な場合、何mmをどの歯に分けるのか
- 終わったあとの保定装置の計画はどうなっているか
参考文献
- Periodontal implications of orthodontic treatment in adults with reduced or normal periodontal tissues versus those of adolescents. Am J Orthod Dentofacial Orthop.(付着の喪失について、青少年・歯周組織が正常な成人・歯周治療後に安定した成人の間に有意な差なし)
- Joss-Vassalli I, Grebenstein C, Topouzelis N, Sculean A, Katsaros C. Orthodontic therapy and gingival recession: a systematic review. Orthod Craniofac Res. 2010;13(3):127-141.
- The effect of non-invasive physical interventions for accelerating tooth movement on orthodontically induced inflammatory root resorption: a systematic review and network meta-analysis.(治療期間と合併症リスクの関係)
- Inadvertent side effects of fixed lingual retainers. J Orofac Orthop. 2022.(脱離率30〜40%、ほとんどが初期の3〜6か月以内に発生)
- Comparative impact of clear aligners versus fixed orthodontic appliances on periodontal health, pain, and quality of life: a systematic review and meta-analysis. BDJ Open. 2026.
- Kailasam V, Rangarajan H, Easwaran HN, Muthu MS. Proximal enamel thickness of the permanent teeth: a systematic review and meta-analysis. Am J Orthod Dentofacial Orthop.(11編・2,118本の歯・4,019の隣接面;遠心面が近心面より平均0.10mm厚い)
- Zachrisson BU, et al. Dental health assessed after interproximal enamel reduction: caries risk in posterior teeth. Am J Orthod Dentofacial Orthop.(4〜6年後に、削った面と削っていない対照面を比較)
- Incidence of gingival black triangles following treatment with fixed orthodontic appliance: a systematic review.(発生率38〜58%、リスク要因の分析)
このページは一般的な情報であり、個別の診断に代わるものではありません。治療の適否・期間・回数は、検査のうえで一人ひとりの状態に合わせてご案内します。